40歳以上の20人に1人、60歳以上の10人に1人が発症するとされる緑内障。90%以上が自覚症状がなく、初期の場合、眼ドッグ等で異常を検出して進行を遅らせるしか治療法がありません。
一度かかると毎日の目薬治療が欠かせない煩わしさがあるだけに、「予防する方法はありませんか?」「日常で何か気をつけることは?」とご質問を受けることも多いものです。
今回はそのような疑問にお答えしましょう。
発症を予防する方法はまだ見つかっていない
「食事の内容次第で予防効果はありますか?」
「適度な運動は眼圧を下げるって本当?」
「サングラスをすれば緑内障の進行を遅らせることができますか?」
「ツボ押しで緑内障を予防することは可能ですか?」
いろいろなご質問を受けますが、これらのうち、ほとんどは「不明です」とお答えすることになります。
眼科医である私は、医学的根拠に基づくこと以外、確信をもって「Yes」とは言えないからです。
最初にお断りしておくと、緑内障を予防する確実な方法は、残念ながら見つかっていません。
緑内障の病理については、まだはっきりと解明されていないことがいろいろとあります。
たとえば、緑内障は眼圧(眼球の中の圧力)が高まることによって視神経が障害され、そのせいで視野が欠けたり、視力が低下したりする病気です。
しかし眼圧が正常値(10~20mmHg)でも、緑内障になる場合があります。
「正常眼圧緑内障」といって、この種類に入る人が実は約70%以上を占めるという調査結果が出ています。
眼圧が正常なのに緑内障を発症してしまう理由は「何らかの理由でその人の視神経が弱まっているから」、あるいは「耐えられる眼圧にもともと個人差があるから」といわれていますが、それ以上の詳しいことは現在、究明が進められている段階です。
しかも、その人の目がどの程度の眼圧に耐えられるかは一朝一夕にはわかりません。
眼圧は季節によって変動し、1日の間にも上がったり下がったりします。
ですから3か月ぐらいに1度、眼圧と眼底(視神経のある場所)と視野を検査して、病状がが進行していればより効果を期待できる目薬(点眼薬)に変更し、進行を抑えられていれば「この人の目にとって、今はちょうどよい眼圧だ」と判断してそれまでどおりの目薬を処方します。
この「十分に低い眼圧」というまるで正体不明の敵から味方を守るために、手探りで懸命に策を練っているようなものです。
その一方で、眼圧を十分に下げると、視野進行悪化が明らかに低いことがわかっています。
けれど眼科医療はここ数十年間、目まぐるしいほどの発展を遂げてきました。
その最も顕著な例が白内障手術です。
緑内障もメカニズムの解明がさらに進み、効果的な予防や根本的な治療の方法を確立して患者さんに提供できる日が来ると信じています。
継続的な眼科検診がいちばんの予防策
緑内障は発症を予防することはできませんが、もし発症しても早くに発見すれば、現在の治療で上手にコントロールすることが可能な病気でもあります。
高齢になるほど罹患率が増えることはわかっていますから、40歳になったら少なくとも年1回、眼科の検診を継続して受けましょう。
特に家族に緑内障の人がいれば、発症する確率は高まります。
緑内障は遺伝的素因のあることが明らかになっているからです。
また、年齢や血流、遺伝以外では近視の人も注意が必要です。
近視の目は奥に長い楕円形(「眼軸長が長い」といいます)のため、神経細胞のある網膜は伸ばされた状態になっています。
ちょうど風船が横にパンパンに膨らみ、風船の素材が薄くなってしまったようなイメージで、伸びた部分はデリケートで傷つきやすく、ダメージを受けやすいのです。
緑内障の治療は目薬による薬物療法が中心ですが、閉塞隅角緑内障のように、手術治療が効果的な種類の緑内障もあります。
いずれにしても主治医とよく相談して、検査で進行の度合いを確かめながら、その時々に最適な治療でコントロールすることをお勧めします。
緑内障の進行予防に効果的なサプリ
話を元に戻しましょう。
冒頭の6つの質問のうち、1つだけ、眼科医として「Yes」とお答えできるものがあります。
緑内障の進行予防に効果を期待できるサプリメントについてです。
「サンテ グラジェノックス」(参天製薬)と「オプティエイドGL」(わかもと製薬)の2種類のサプリメントを置いていますが、緑内障の目薬との併用でも今後の緑内障の治療方針決定に当たって、医師の側も安心して使用を勧めています。
まとめ
◆医学的根拠に基づく発症予防の方法はまだ見つかっていない。
◆いちばんの予防方法は定期的な眼科検診の継続。
◆緑内障の発症機序は未解明の部分も少なくないが、加齢とともに発症しやすいこと、遺伝的要因があること、近視の場合は確率が高まることははっきりとしている。
◆緑内障の進行予防に効果を期待できるサプリメントは存在。治療継続中に使用する際には主治医に相談を。